どうも、すっかり宿泊業が本業になっているタケルンバです。
こんな記事が話題になっておりました。
AirbnbとCCCが連携という話。
そしてちょっと前にはこんなお話も。
フランスからの懸念。
以前からいろいろ話題になっていることでもあり、いろいろな方々が懸念やらなんやら表明しているお話でもあり。あの「かりすまニュースサイト管理人(笑)」ことまなめも心配しているご様子。
うわぁあああああああああ近年稀にみる最悪のコンビだあああああああああああああ。賃貸vs持家論、案外終止符打つんじゃない?持家派大量発生しそう…シェアで儲けようって言い始めて賃貸の家賃が寝上がるルートか、それともホテル業界が死ぬか、はたまたその両方か…
http://homepage1.nifty.com/maname/log/201605.html#281022
これね、宿泊業の人間としてはあんまり心配していません。
宿泊業には規制がある
なんでかというと、宿泊業は規制産業だから。
旅館業法という法律があり、この法律を根拠に都道府県あるいは市・特別区が営業停止権を持つ商売だから。誰がなんと言おうと法律に反して営業できんのですよ。
6 改善命令、許可取消又は停止
旅館業法概要|厚生労働省
都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)は構造設備基準又は衛生基準に反するときは改善命令、許可の取消又は営業の停止を命ずることができる。
もう、これは明快に。
旅館業法 第八条
都道府県知事は、営業者が、この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき、又は第三条第二項第三号に該当するに至つたときは、同条第一項の許可を取り消し、又は期間を定めて営業の停止を命ずることができる。
ですので、こんなこと言ってもダメです。
増田CEOは「33年前、僕らが貸しレコード店を始めた時は、対応する法律がなかったのに『違法』と言われた。著作権関連の法整備が進んだことで軌道に乗った」とし、Airbnbのようなサービスも「既存の枠組みで捉えきれないだけ」と持論を展開。「よりクリアな法整備を望む」と述べていた。
「日本流ホームシェアリングを」──AirbnbとCCCが連携 貸し部屋ホストにTポイント付与 - ITmedia ニュース
クリアにダメです。
「民泊は宿泊ではない」という抜け道
しかし何故こんなに民泊が話題になり、いろいろなところで話題になっているかというと、オリンピックなどに向けて宿泊施設が足りないという現実があるとともに、民泊は宿泊ではないという抜け道があるからなんですよね。
宿泊じゃなきゃなんなのよというと、基本的には賃貸であるという発想。宿泊サービスを提供するんじゃなくて、家・住まい・スペースを提供するんだと。一時的に貸すんだと。賃貸なんだと。
現実に欧米とかでの民泊は、不動産の短期賃貸という側面が強いです。例えばテニスの全英オープンで有名なウィンブルドン。大会の時期は大変混み合います。そこで地元の人はウィンブルドンを脱出して、自宅を賃貸に出す。そこに大会観戦者が泊まったり、選手が泊まることも。
会場周辺に住む人たちは、大会の時期に避暑で家を空ける。また、大会期間中は、世界中から2週間で約50万人の観客が訪れる。その騒ぎに巻き込まれるのを嫌がり、早々と自宅を空ける人も多い。その家を選手や関係者が借りるのだ。
錦織、会場近くに一軒家借りウィンブルドン万全体勢 - テニス : 日刊スポーツ
一定の時期に異常な需要が発生するスポーツイベント絡みではあんまり珍しい話じゃないんだよね。日程が比較的安定しているイベントとかだと特に。テニスだけに限らず、ゴルフ、モータースポーツ、自転車とか。毎年そのイベントだけに行く人はいるし、毎年そのイベントの時期だけ自宅を空けるという人もいる。逆にサッカーとか野球はあんまり聞かない。ホームスタジアムで定期的に試合があるから、短期賃貸とは馴染まない(チャンピオンズリーグ決勝とかは例外)。
こっちでいくなら不動産の賃貸という枠組みで、貸し別荘とか、ウィークリーマンションとかに近い話です。
なんで既存の枠組みじゃダメなの?
問題はこれな。宿泊業でも不動産賃貸業でもやれる。でもやらない。これ不思議。
増田CEOは「まだ十分に理解されていないが、ビジネスチャンスを感じる」と話す。
「日本流ホームシェアリングを」──AirbnbとCCCが連携 貸し部屋ホストにTポイント付与 - ITmedia ニュース
まあ、儲かりそうだからやりたいんでしょう。宿泊業でやれば厚生労働省とか、自治体の保健所の管轄下となるし、不動産賃貸業なら国土交通省の所管だ。規制産業はなにかとめんどい。規制の少ない商売をしたい。本音としてはすげーわかる。実際めんどいし。
正直ね、オリンピックよ。みんなオリンピック狙い。めっちゃ儲かる。家賃でもホテルの部屋代でも、都心とかだったら今の相場の三倍とかザラ。下手すりゃ十倍。近年のオリンピック開催地で起きていること。
しかしながらオリンピックが終わったらどうなるか。なにも残らない。だから、今、投資するのはダメなんです。今から建物とかつくっても回収できない。間に合わないし、オリンピック後の回収は絶望的だから。投資せずに儲けるには、仲介ビジネスとか手数料ビジネスしかないんですよ。これからマンションつくっても投資金を回収できないから、既に建っているマンションとか一戸建てとかの賃貸契約にいっちょがみしたいと。そういうことなんだな。
なので、もう既にホテルがある宿泊業界とか、既にマンションを持っている不動産業界とかは民泊に反対なんです。今までの商売を続けるだけで儲かるから。しかし現在そうしたものを持たないところが民泊賛成なんです。いっちょがみできるから。
そういう持つもの・持たざるものという視点で民泊を見ていくと、それぞれのポジショントークっぷりが理解しやすいです。
ちなみに観光庁は国土交通省の外局であり、観光優先という名目で宿泊業に食い込みたい。一方、厚生労働省は厚生労働省で、賃貸であろうがなんだろうが、宿泊の実態を伴うものは旅館業法の対象であり、厚生労働省管轄であるという立場です。ま、民泊をめぐった管轄権争いもちょっとある。
個人的には「民泊」という言葉が悪かったと思ってます。「泊」という漢字を入れたのはミステイクよなー。これで厚生労働省が譲れなくなったし。
宿泊業関係者からは以上です。